アンティークコインの世界でも、オークションが一般的に行われています。敷居が高いイメージかもしれませんが、簡単なルールを守れば、全く難しくありません。そこで、参加方法や「あるある」をご案内します。
参加方法
オークションは、年間を通して複数の業者が実施しています。株式会社日本コインオークションの場合、年2回です。会場に行かなくても、インターネットでリアルタイムで参加可能です。
下のリンク先は日本コインオークションで、オークション開催前に詳細が公開されます。会場は、東京都品川のプリンスホテルです。
【リンク先】日本コインオークション
出品コインをざっくりと確認して、オークションに参加しよう!と決めたとします。参加方法は、全部で6通りです。
参加方法
- オークション会場に行く
- インターネットでリアルタイムで参加
- 電話
- 郵便
- FAX
- 代理入札
この記事を読んでいただいている方は、インターネットを使える環境です。そこで、会場参加とインターネットを中心にして考えます。
オークション会場に行く場合
オークション会場に行く場合、事前登録しなくても、会場で参加登録可能です。
ただし、オークション開催会社から見ると、事前登録なしでやってきた人が誰なのか、分かりません。また、高額なコインも出品されますし、来場者の安全確保が必要です。
このため、住所氏名等を会場で記入するとともに、身分証明書の提示を求められます(運営がコピーを保管します)。既存顧客の場合は、身分証明書の提示は不要です。
場合によっては、事前に保証金を出すように要求される場合もありますが、それは少数派です。社会人にふさわしい身なりと言葉遣いで登録しましょう。事前登録なしで会場に行くのが不安な場合は、事前登録します。ホームページから可能です。
オークション開催時間
オークションの開催時間は、午前10時くらいから終了までです。出品コインの総数やオークションの進行速度にもよりますが、概ね午後7時30分には終わります。
朝から晩まで続くものの、全ての時間帯に参加する必要はありません。多くの場合、落札したいコインが出るころにやってきて、終わったら帰ります。例えば、古代コインが欲しかったら、午前10時前に会場に入り、30分もしないうちに会場を後にすることもできます。また、出入り自由です。
会場でもらえる物
次に、会場でもらえる物を確認します。全部で3つです。
・名札
首からぶら下げるタイプの名札です。受付で登録したことを示します。会場を出入りする際には、必ず首にかけましょう。帰宅の際に、返却します。
・パドル
パドルとは、番号札です。下の写真は、ゆったり為替(当ブログ運営者)が使用した実物です。この札をオークショナー(司会者)に見せることで、落札の意思を示します。なお、この紙の大きさは、B5版です。
・パンフレット
パンフレットは、A4版で全面カラー印刷の豪華なものです。「パンフレット」の名前から想像できるような、ペラペラの紙ではありません。1枚1枚が重厚で、オークションが終わったからといって捨てることはできません。素晴らしい作りです。
このパンフレット自体が、コレクションアイテムになるのでは?というくらいです。コインのデータ自体はウェブサイトにも掲載されているものの、このパンフレットを見ながら吟味できます。
オークション会場で気を付けること
次に、オークション会場で気を付けることをご案内しましょう。おそらく一つです。「静かにすること」です。オークションは、朝から晩まで続きます。オークショナーが価格を発声し、その価格で買いたい人はパドルを上げます。すなわち、声が会場内に十分に届くことが必要です。
よって、静かにします。ごく小さな声で私語をしても、他の参加者の迷惑になります。ずっと黙っているくらいが最良です。
落札したら
買いたいコインの順番が回ってきて、パドルをずっと上げ続けたとします。結果、落札に成功したとしましょう。
落札したコインは、その場でもらうことはできません。オークションの翌日以降になります。また、支払う金額は、落札価格と異なります。以下の金額の合計額です。
支払額
- 落札価格
- 落札価格の10%(手数料)
- 手数料にかかる消費税
- 送料
例えば、10万円で落札した場合、実際に支払う額は111,000円+送料となります。支払額については、日本コインオークションから送られてくる郵便で確認できます。
金額を確認後、振込で支払います。支払い後、そのまま待っていれば、郵送で受け取ることができます。
なお、日本コインオークションのオフィスに出向いて、直接受け取ることもできます。この場合は、オークション開催翌日の午後4時までに、日本コインオークションに電話してください。
オンラインで参加する場合
インターネットでリアルタイムで参加する場合も、会場参加と基本は同じです。ただし、オンラインですからパドル等の実物配布はありません。サイトに登録して、お目当てのコインがオークションに出てくる順番を待って、入札します。また、事前入札できるので便利です。
下の画像は、日本コインオークションです。右上にある「会員登録」で参加登録できます。登録後は「ログイン」で各オークションに参加できます。
どの入札方法が良いか
では、オークションに参加する方法の中で、どれが最良でしょうか。
参加方法
- オークション会場に行く
- インターネットでリアルタイムで参加
- 電話
- 郵便
- FAX
- 代理入札
日本に住んでいて日本語を使う人は、電話をおそらく使わないでしょう。会場で電話のやり取りを見ていると、スタッフは英語で会話しています。そこで、電話を除きます。
郵便・FAX
郵便やFAXで入札する場合、オークションが始まる前に、最大入札価格を指定して運営に通知します。
例えば、あるコインに対して、最大入札価格を50万円に設定したとしましょう。この場合、落札価格が50万円以下ならば、そのコインは自分の物になります。40万円で落札できるかもしれません。いくらで落札できるかは、他の参加者次第です。
しかし、オークションが白熱して、最終的な落札価格は51万円だったとしましょう。この場合、「50万円を超えたから仕方ない」と思うか、それとも「あと1万円ならば、頑張って入札できた」と残念に思うか、どちらでしょうか。
残念に思うならば、別の方法を使うべきでしょう。また、こんな例もあります。
手の内を晒される
例えば、現在の入札価格は50万円で、それは郵便での入札だとします。そして、郵便の入札価格は、最大額を50万円に指定していたとしましょう。すなわち、他の誰かが51万円で入札すれば勝利できます。
この場合、オークショナーは「もう一声かかれば、郵便入札の額を上回りますよ」という趣旨の発言をして、来場者に入札参加を促します。
この場合、自分の手の内を広く公開されることになります。すなわち、郵便やFAXによる入札は不利です。
インターネット(ライブ)
次に不利なのは、インターネット(ライブ)です。ライブですから、会場のオークションにインターネット経由で参加します。会場にわざわざ足を運ばなくても良いです。これがメリットです。
しかし、欲しいコインの番が回ってきたときに、たまたま回線がダウンしてしまった、PCやスマホがフリーズした…このようなことがあっても、救済措置はありません。ゆったり為替は、このパターンで入札機会を逃したことがあります。
どうしても欲しいコインがある場合は、会場に行くのが最良です。しかし、会場まで行けないという場合もあるでしょう。その場合、インターネットの不具合がないように気を付けましょう。
なお、インターネット参加の場合、事前入札できます。事前入札とは、会場でのオークション開催に先立って、あらかじめ入札できる仕組みです。当日は別件があって参加できないなどの場合に、利用しましょう。
会場に行く
というわけで、最良なのはオークション会場に行くことです。しかし、デメリットがあります。超高額のコインを落札したい場合です。
例えば、数千万円規模のコインを落札したいとしましょう。この場合、会場でパドルを上げるのは、抵抗があるかもしれません。なぜなら、「自分は少なくとも数千万円以上を持っている」ことを、会場にいる人全員に知らせることになるからです。
これが不安な場合は、代理入札を頼むことができます。あまりに高額(と見込まれる)コインを落札したいけれども不安な場合は、事前に日本コインオークションに相談してみましょう。
以上の内容は、オークションに参加する際の要点をまとめたものです。実際に参加する場合には、「オークションに関する規定と条件」を必ず確認してください。
【余談】過去の落札コインその1
第48回日本コインオークション(2018年12月開催)において、金貨「スリーグレイセス」が9,100万円で落札されました。現存枚数は4枚、うち3枚は博物館に収蔵されていますので、民間流通品はこの1枚のみという貴重品です。
オークションの「あるある」
次に、オークションで見られる「あるある」を確認しましょう。知っておくと、役に立つかもしれません。
スタート価格の決め方
オークションでは、それぞれのコインについてスタート価格が決められます。貴重なコインは高額になり、ありふれたコインはそこそこの価格になります。では、スタート価格は、どのように設定されるでしょうか。
一般的には、相場価格よりも少し安価に設定されます。
この理由ですが、確実に落札してほしいからです。相場価格よりも多少なりとも安いなら、そのコインを欲しいと思う人は入札してくれるでしょう。欲しい人が複数いれば、価格は徐々に上昇していきます。
また、出品する人は、売りたいから出品します。そこで、確実に売るために、相場よりも少し安くするのが合理的です。本音としては、高額で売りたいでしょう。しかし、相場よりも高値に設定すると、誰も入札してくれないかもしれません。
すなわち、落札する側から見れば、スタート価格付近での落札を狙うという戦略を立てられます。他の参加者が対抗して高値になってきたら、入札から撤退します。
スタート価格が高値になることも
ちなみに、スタート価格が相場よりも少し安いなら、出品されたコインは全部落札されるでしょう。しかし、現実には、誰にも入札されずに不落になることがあります。なぜ、こんなことが起きるのでしょうか。理由は、スタート価格が高すぎたからです。
スタート価格は、出品者の希望で変更可能です。これを受けて、相場よりも高額に設定されたとしましょう。この場合、誰も入札してくれない可能性があります。
よって、スタート価格付近で入札して安く買いたいという場合、目的のコインの相場価格はいくらなのか、ぼんやりとであっても事前に知っておく必要があるでしょう。でないと、スタート価格で買ったのに割高だった、ということになりかねません。
もちろん、欲しいコインだったら、多少割高で買っても全く問題ありません。アンティークコインは、買いたいときにいつでも買えるわけではないからです。オークションで買えるチャンスに巡り合えたら、それを生かすことが大切です。
スラブ入りは高額になる傾向
スラブとは、コインを封入しているプラスチックケースです。
画像引用:(株)ダルマ
スラブに入っていようがなかろうが、コインの価値は同一です。
しかし、実際の落札価格を見ますと、スラブに入っているというだけで、価格が何割か上昇する傾向があります。そこで、裸コイン(スラブに入っていないコイン)を買って、スラブに入れてから売却するという方法が使えます。
ただし、鑑定会社に出してスラブに封入してもらいます。このため費用が掛かりますし、時間もかかります。また、期待外れの低評価で鑑定されてしまい、ガッカリという結果もあり得ます。この辺は、運です。
高額コインが落札された後
大きなオークションになると、貴重なコインが出品されることがあります。スタート価格が1,000万円を超えるようなコインです。そして、落札希望者が複数いて、競争になったとします。
その結果、スタート価格とは比較にならないような高値で、落札価格が決まることがあります。すると、会場がどよめき、多くの人が余韻に浸ります。
余韻は収まらない
余韻が会場を包んでいても、オークションは続いていきます。この場合に、興味深いことが起きるかもしれません。それは、「高額落札の次のコインは、安値で落札されることがある」です(いつもそうなるとは限りません)。
入札に参加している人は、余韻に浸っています。すなわち、気持ちの切り替えが十分でありません。このために起きる現象です。
よって、高額コインの次のコインが欲しい場合、余韻に浸らずに気持ちをしっかりと維持しましょう。大きなチャンスに巡り合えるかもしれません。
一気に決着をつけたい場合
自分がどうしても欲しいコインが、出品されているとします。そして、高額になっても構わないから欲しいです。スタート価格は5万円だったとします。オークショナーは、周りの状況を見ながら、徐々に価格を引き上げていきます。
- 5万円
- 5万2千円
- 5万4千円…
徐々に価格が上がっていきます。オークション会場を見渡すと、パドルを上げている人が大勢います。また、インターネット経由でも、入札参加者がいるようです。
こんな時、ライバルを一気に突き放して勝利したいかもしれません。この時に発動する技です。
高値で入札
その技とは、現在値よりも大幅な高値で入札することです。今回の場合なら、大きな声で「10万円!」などとオークショナーに伝えます。すなわち、今の価格に関わらず、10万円で買います!という意思表示です。
オークショナーは、高い価格で買いたいという人がいれば、その人を優先します。入札の現在価格は、いきなり10万円に跳ね上がります。これで、他の入札参加者の意欲を削ります。その結果、自分の勝利が近づきます。
しかし、これで勝利が確定しない場合があるのが、オークションの興味深いところ。誰かがパドルを上げ続ける可能性があり、この場合、さらに価格が上昇します。
その戦いの様子を見守るのは、とてもワクワクします。
複数枚が同時に出品される場合
出品カタログを見ますと、複数のコインや紙幣が、まとめてオークションにかけられている場合があります。例えば、100枚の紙幣をまとめて1つの出品物とみなして、オークションに出される場合です。
このような場合、1枚1枚の価値は低いです。
お宝が紛れ込んでいるかも
ところが、こういった出品物に、お宝が眠っている場合があります。例えば、特年です。特年とは、特定の年号だけ発行数量が極めて少なくて価値が高い、という年号です。
数多くの枚数に紛れて特年があれば、貴重な紙幣やコインを安値で購入できることになります。
特年の知識があり、出品物を事前に調べれば、もしかしたらお宝に巡り合えるかもしれません。ただし、この幸運に恵まれる可能性は高くないので、期待しすぎるのは禁物です。
【余談】過去の落札コインその2
オークションでは、安価なコインも出品されます。下は、第52回コインオークション(2020年12月開催)で出品された銀貨で、落札価格は1,000円でした。1,000円なら、気軽に参加できます。
出品した本人が落札する場合
オークションに自分のコインを出品する理由は、何でしょうか。それは、売って現金を得るためです。しかし、出品したコインを、自分で落札する場合があります。その理由には、少なくとも2つのパターンがあるようです。
安く売りたくない
一つ目は、希望額よりも安く売りたくない場合です。以下の例があったとしましょう。数字は適当です。
- スタート価格:500万円
- 希望売却価格:1,000万円
スタート価格は500万円ですから、極めて貴重なコインです。人気もあるでしょう。しかし、人気があるといっても、1,000万円で売れるかどうか、微妙かもしれません。そして、出品者は、安く売りたくないと考えているとします。安く売るくらいなら自分で買い戻したい、という状態です。
この場合、オークション主催者に、あらかじめ希望売却価格(この例では1,000万円)を伝えます。そして、誰かが1,000万円以上で入札したら、コインは入札者のものになります。1,000万円に満たない場合は、出品者が最終入札者となって落札します。
こうすれば、安値で誰かに売ることはなくなります。この方法を「リザーブ」と呼びます。
この方法を使う場合、入札価格が1,000万円に到達しなければ、自分で自分のコインを買うことになります。手数料を支払う分だけ損になりますが、それでも仕方ないという場合に実行します。
評価額を上げたい
もう一つ、別の理由でリザーブする場合があるようです。それは、コインの評価額を上げたい場合です。
どこかに、お金持ちのコレクターがいるとします。そのコレクターは、自分のコインの評価額が高いことに満足するタイプです。そこで、売る気はないけれど、人気がある自分のコインを出品します。
すると、人気コインですから、大勢が入札に参加してくれます。自分も、リザーブで入札に参加します。そして、競争の結果、最終的に自分で落札します。こうすることで、以前の評価額は更新されます。すなわち、新評価額は以前より高額になります。
出品した人は、高い評価額を得られて満足するというパターンです。評価額を高められるなら、手数料は痛くないと考えます。
なお、出品した結果、安値で落札になってはいけません。そこで、相場状況や、出品するオークションでの予想落札価格を丁寧に調査してから実行します。
また、リザーブ価格を超える入札があってはいけません。本当は売りたくないのに、誰かに売ることになるからです。そうならないよう、リザーブ価格は十分に高値に設定します。
これは、一般の人には実行できない(と言いますか、実行することを想像できない)例でしょう。お金持ち限定?の楽しみ方です。
高額すぎる入札
極めて珍しいコインが出品されたとしましょう。あまりにレアなので、人生唯一のチャンスかもしれません。そして、欲しいです。この場合、相場価格を無視して入札に参加する価値があるでしょう。自分の気持ち次第です。
そうでなく、ヤフオクや楽天で一般的に売られているコインが、破格の高値で落札されることがあります。実際に見た例を挙げるなら、相場価格は数百円なのに、なぜか1万円を優に超える価格で落札されたことがあります。
あるいは、(株)ダルマで同種・同グレードのコインが売られていて、その価格よりも高額で落札された…など。
これが起きてしまう理由は、少なくとも2つあるでしょう。1つは、入札者が相場価格や販売価格を把握していなかったこと。そして、オークション独特の雰囲気に飲まれてしまったこと。
高額すぎる入札で損してしまわないよう、気を付けましょう。また、出品する側としては、こういうことがあるから楽しいです。ワクワク。
オークションの最終盤
オークションは、朝から晩まで続きます。そして、終了予定時刻はあらかじめ決まっています。その時刻を越えてオークションをすることはありません。オークション会場はホテルであり、契約に従って会場を引き渡す必要があるからです。
ところが、オークションが大盛況となり、進行が遅めになったとしましょう。その結果、残り時間が短くなってきたのに、入札を待っているコインが多く残っています。この時に起きる現象です。
オークショナーは、時間内ですべてを終了させるため、コイン1枚にかける時間を短くします。この場合、そのコインを落札しよう!と事前に決めていた人は、決めたとおりに入札しますので、何の問題もありません。
しかし、その場で考えて入札しようという人は、参加が徐々に難しくなってきます。考える時間が短くなるからです。すなわち、入札参加意思を事前に決めている人が、有利になります。
気楽に参加しよう
以上、小ネタなどをたくさん書いてきましたが、難しいものではありません。興味深いコインが見つかったら、オークションに参加してみましょう。
なお、経験が浅いうちは、興味深いコインがなくても参加する価値があります。場慣れするためです。お目当てのコインが登場した時に変に緊張してしまわないためにも、気軽に何度も参加しましょう。