1801年~1900年 その他金属 米州

イギリス領北アメリカ・ノバスコシアの1ペニー銅貨(トークン)

18世紀後半を中心に、イギリスは国内流通用の貨幣を十分に準備できず、私企業等が自前でトークン(代用貨幣)を発行していました。各自が自由に発行したため、その種類は2万にもなります。イギリス本国がこんな状態ですから、その植民地も貨幣供給が滞りました。

今回は、イギリス領北アメリカ(現在のカナダ)のノバスコシア(Nova Scotia)で流通したトークンを概観します。イギリスの混乱ぶりやトークン発行経緯等につきましては、下の記事でご確認ください。

車輪銭
イギリスの通貨危機とトークン・車輪銭(18世紀~19世紀初め)

貨幣の流通という点において、イギリスは、18世紀から19世紀初めにかけて混乱状態にありました。18世紀のイギリスといえば、産業革命です。世界に先駆けて機械化を達成し、19世紀の覇権につながりました。そ ...

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コインの外観とスペック

カナダ1ペニー

カナダ1ペニー

コインのスペック

  • 額面:1ペニー
  • 年号:1813年
  • 材料:銅
  • 直径:34mm
  • 重量:20.02g
  • グレード:EF
  • ダルマ公式ページ

ノバスコシアの位置

ノバスコシアの位置は、下のGoogle Mapの矢印部分です。1813年当時、アメリカ合衆国は既に独立していた一方、カナダはイギリスの植民地でした。カナダがイギリスと対等の地位を得たのは1931年、憲法が制定されて完全独立したのは1982年のことです。

よって、カナダは意外に若い国家ということになります。

ノバスコシア州の地図

ノバスコシアは大西洋に面しており、イギリスとの行き来において重要な場所であったことが地図から分かります。

コインのデザイン

コインのデザインを順に見ていきましょう。

表側

下の画像を見ると、どこかで見たことがあるような…と感じるかもしれません。

カナダ1ペニー

下は、イギリスのトークン記事で紹介しました車輪銭です。元の写真は暗いので、デザインがはっきりわかるように色合いを変えています。文字は異なるものの、デザインがほとんど同じだと分かります。

車輪銭2ペンス

ノバスコシアのトークンでは、女性が荷物に座り、右手を前に伸ばして月桂樹を持ち、左手でヘルメスの杖(平和などの象徴)を支えています。そして、左下の遠くに船が見えます。イギリスの車輪銭と比べて、座っている場所や持っているものが異なるものの、ほぼ同じ構図です。

この理由は、コインのデザイナーを確認すると分かります。ノバスコシアのトークンの年号の上に、横線が引いてあります。その右端に、小さな文字で「H」と書いてあり、これはデザイナー名を示します。Thomas Halliday(トーマス・ハリデー)氏です。

Thomas Halliday氏はSoho Mint(ソーホーミント)で修業し、1810年頃にバーミンガムで独立しました。イギリスの車輪銭を作ったのはSoho Mintですから、Thomas Halliday氏は車輪銭を隅々まで知っています。その経験を生かし、独立後にこのデザインを利用したと予想できます。

ちなみに、ノバスコシアのトークンでは、女性が荷物の上に座っています。その荷物は太い紐で頑丈に縛り付けてあることが分かります。ノバスコシアはイギリスとの行き来で重要な港を抱えていましたから、この荷物は船荷を表現していると分かります。

なお、コインに書いてある文字「Trade & Navigation」について、当ブログ運営者はまだ意味や意図を確認できていません。イギリスの航海条例(Acts of Trade and Navigation)を意味しているんだろうと思いつつも、詳細不明なので、文献で確認できたら追記します。どこか大きな図書館にあると期待。

航海条例

17世紀以降、イギリスで制定された一連の法規制を指します。貿易における各種規制を制定しており、当然ながらイギリスの利益になるように作られています。植民地との摩擦がひどくなったこともあり、19世紀には廃止されました。

裏側

裏側は、文字がたくさん書かれています。

カナダ1ペニー

真ん中は「ONE PENNY TOKEN」つまり1ペニートークンだと書いてあり、正式な貨幣でないことが分かります。

周囲の文字は、「PURE COPPER PREFERABLE TO PAPER」つまり、紙幣よりも純度の高い銅の方が望ましいと書いてあります。当時のイギリス領北アメリカでの紙幣に対する考え方が表現されています。

紙幣は紙にすぎず、燃えたり細かく破くと使い物になりません。そして1813年当時、イギリスとアメリカ合衆国は戦争をしていました(米英戦争)。さらに、イギリスはヨーロッパ大陸でナポレオン戦争の真っ最中です。

果たして、紙幣は今後も額面通りの価値を持ってくれるでしょうか。こう考えると、金属は国家の信用がなくても価値を持ち続けますので、貨幣は最適な選択肢だったことでしょう。

銅は貴金属ではありませんが、1ペニーは少額貨幣です。よって、銅はちょうど良い素材だったことでしょう。

イギリス領北アメリカの各地で利用

ちなみに、この銅貨はイギリス当局が購入して流通させたのではなく、商人のHaliburton(ハリバートン)氏によって持ち込まれたとされています。また、ノバスコシアの狭い地域だけでなく、イギリスが統治していた一体で広く流通したようです。

さらに、1ペニーだけでなく、ハーフペニーやファージングも流通しました。

1800年前後のイギリスだけでトークンの種類は2万、そして各植民地での発行を合わせると、トークンの種類は大変な数になります。この周辺の歴史を調べながらトークンを収集すると、面白いかもしれません。

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