今回は、1929年にニューギニアで発行された白銅貨2枚を紹介します。この2枚は合計で88,000枚製造されたのですが流通せず、最終的に400セットのみ発行されたという希少品です。
コインの外観
1/2ペニーと1ペニーを順にご覧ください。
1/2ペニー
画像引用:Numista
コインのスペック
- 額面:1/2 ペニー
- 年号:1929年
- 材料:白銅
- 直径:19mm
- 重量:4g
- 発行枚数:25,000枚
1ペニー
画像引用:Numista
コインのスペック
- 額面:1ペニー
- 年号:1929年
- 材料:白銅
- 直径:24.5mm
- 重量:5g
- 発行枚数:63,000枚
両方とも大きさは50円硬貨(直径21.0mm、重量4.0g)くらいで、1ペニーのほうがやや大きいです。この2枚には特におかしな点は見当たりませんが、流通前に返品された理由は何でしょうか。
コインはオーストラリアで製造
コインが処分された理由を知るために、ニューギニアの歴史をざっくりと確認します。
19世紀に列強が東南アジア各地を植民地化し、ニューギニアはドイツ領となりました。その後、1914年に第一次世界大戦が勃発してオーストラリアに征服されました。これを受けて、1929年当時はオーストラリアの支配下にあり、コインもオーストラリアで製造されました。
なお、ドイツ領となった経緯等について、下のリンク先記事で確認いただけます。
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オーストラリアの銀貨と似ていた
1929年、ニューギニア用に1/2 ペニー白銅貨と1ペニー白銅貨が製造されました。しかし、ここで問題が発覚しました。オーストラリアの銀貨2種類と似ていたのです。
大きさ等が似ていれば、ニューギニアからオーストラリアに白銅貨を持ち込み、形がそっくりなオーストラリアの銀貨と交換すれば簡単に儲かります。この問題が持ち上がったため流通せず、白銅貨はメルボルン造幣局に返品&溶解処分となりました。
しかし、2枚1組で400セットがコレクション用として販売され、現在に受け継がれています。
オーストラリアの銀貨
回収騒ぎを見ますと、オーストラリアに穴あきの銀貨があったと予想できます。オーストラリアで穴あき銀貨…?聞いたことがないな…というわけで確認しますと、下の6ペンス銀貨でした。
画像引用:Numista
確かに形は丸形で同じですが、穴が開いていませんしデザインも全く違いますから、間違えようがないように見えます。ここで問題となったのは、円形という形に加えて直径だったようです。下の比較表で確認します。
コイン | 直径 | 重量 |
1/2 ペニー | 19mm | 4g |
6ペンス銀貨 | 19mm | 2.83g |
1 ペニー | 24.5mm | 5g |
1シリング銀貨 | 23.5mm | 5.65g |
1/2 ペニーと6ペンスは円形で直径も同じですから、間違えやすいかもしれません。1ペニーと1シリングは1mmの差でわずかな違いです。1mmの差は間違えやすいか、それとも簡単に分かるか。
当時は、紛らわしいと判断されたようです。例えば、1/2ペニーを下のようにコインラッパーで梱包すれば詐欺が可能で、1ペニーでもできると判断されたのでしょう。
デザインを変えて1936年に発行
騒ぎを受けて発行が延期されたのち、1936年に1ペンス銅貨が発行されました。今度は直径や重量が明らかに異なり、銀貨と間違えることはなかったでしょう。
画像引用:Numista
コインのスペック
- 額面:1ペニー
- 年号:1936年
- 材料:白銅
- 直径:26.7mm
- 重量:6.6g
- 発行枚数:360,000枚
(株)ダルマで購入可能
画像引用:(株)ダルマ
この白銅貨2枚のセットを(株)ダルマで購入可能です。コレクション用として発行されただけあって、購入者は大切に保管してきたようです。
- 1/2 ペニー:世界最高鑑定(当記事執筆時点)
- 1ペニー:世界第2位鑑定(同上)