概要・雑学

リストライク(再鋳貨)の種類と価値

2022年6月3日

リストライク(再鋳貨)という言葉を聞くと、再発行コインだと分かります。しかし、リストライクには意味がいくつかあります。そこで、それぞれの違いなどを紹介します。

リストライクの種類

最初に、2つの意味を紹介します。

リストライクの意味2つ

一つは、「コインの製造終了後、何年も経過してから、当時使っていた刻印(金型)を再利用してコインを作る」場合です。二つ目は、「新たに刻印を作るものの、そのデザインを以前製造したコインと同一にする場合」です。

一つ目の方が、厳しい定義でしょう。刻印を使い込むと刻印が削れていきますので、デザインは次第にぼんやりしてきます。それを再度使ってコインを作るとなると、新品なのにデザインの明晰さに欠けてしまいます。

また、使用済みの刻印は捨てられることもあったでしょう。よって、一つ目のリストライクを作るには、「当時の刻印が保存されており、しかも、使い込まれていない」ことが必要です。

それに比べれば、二つ目の方が難易度が低いです。後年になって刻印を新規に作れば良いからです。

なお、二つ目の意味のリストライクは、大量に作られることがあります。この場合、コインとしての付加価値はありません。金や銀の地金と同じ価格で取引されます。

その一方で、数量限定で製造される場合もあります。この場合は、希少性が高くなります。現存数が少なければ、希少価値はさらに上がります。

私人が作ったリストライク

なお、広義のリストライクを見ますと、こんな意味もあります。

リストライクの意味3

私人が、プロモーション目的等で勝手に再発行

これは問題かもしれません。この場合のリストライクは、レプリカや偽造とどこが違うのでしょうか。極端な例として、アッパーカナダのハーフペニーを紹介します。

アッパーカナダのハーフペニー

下の銀貨は、リストライクです。しかし、オークション等でコイン紹介を見ると"Restrike"という感じでダブルクォーテーション("")がついている場合があります。すなわち、要注意ということです。その理由は…(下に続く)

アッパーカナダ

アッパーカナダ

コインのスペック

  • 額面:1/2 ペニー
  • 年号:1794年
  • 材料:銀
  • 直径:30mm
  • グレード:PF FDC

実は、コインの裏に書かれている「COPPER COMNAPY OF UPPER CANADA」(アッパーカナダ銅会社)は存在しなかったようです。そもそも、この銀貨は通貨として発行されてさえいません。当時の造幣所スタッフの作品に過ぎませんでした。これを作った理由は不明です。練習で作ったのかもしれませんし、自分の技量を示すためだったかもしれません。

その刻印が捨てられずに残されており、足りない部分を新たに作り、19世紀になってリストライクとして商業目的で販売されました。

貨幣(コイン)として発行されていない、造幣所スタッフが作った作品。それが後年に私人によって再生産された、しかも、リストライクのコインとして商業販売された…要するに、詐欺です。しかし、コインの世界でリストライクとして受け入れられ、現在に至ります。

ただし、販売者やオークション主催者によっては、これを Restrike でなく "Restrike" としてダブルクォーテーションを付けています。いわくつきのリストライクですよ、という注意喚起でしょう。コイン業界の興味深い一面です。

ちなみに、アッパーカナダとは、下の地図の矢印の先部分です。オレンジ色になっている部分をアッパーカナダと呼び、当時イギリスの植民地でした。

アッパーカナダ

画像引用:Wikipedia

次に、大量生産されたリストライクと、希少性のあるリストライクを比較しましょう。

大量生産されたリストライク

下の画像は、オーストリアのフランツ・ヨーゼフ1世の4ダカット金貨で、リストライクです。第48回日本コインオークションに出品されました。

ヨーゼフ・フランツ1世

ヨーゼフ・フランツ1世

コインのスペック

  • 額面:4ダカット
  • 年号:1915年
  • 材料:金
  • 重量:13.76g
  • グレード:PL FDC

グレードは「PL FDC」です。すなわち「プルーフのような輝きを持っていて、完全未使用品」ですから、とても高品質です。そして、落札価格は64,000円でした。

さて、ここで、コインでなく金(きん)としての価値を計算しましょう。このコインの重量は13.76gで、金の純度は98.7%です。すなわち、金の重量は13.58gです。金相場は、日々変化します。当時の価格は1グラム4,500円くらいでした。この条件で金としての価格を計算しますと、以下の通りです。

13.58g×4,500円×1.08(消費税)=65,999円
(当時の消費税率は8%)

すなわち、この金貨は、地金の価値よりもわずかに安く落札されました。この金貨を買おうとして入札した人は、金地金価格を知った上でオークションに参加していたと予想できます。

なお、落札者が実際に支払う金額は、落札額に手数料等を含んだ金額です。手数料の額は、落札額の10.8%(消費税含む)ですから、実際に支払う額は70,912円になります。

リストライクのコインを買うときの留意点

以上の通り、リストライクの中でも大量生産されたものは、プレミアムが付きません。このため、購入する前に、大量に製造されたかどうかを確認する必要があります。

コインカタログ等で取引価格が「BV」となっていたら、それは地金価格で取引されています。BVとは、bullion value(=地金の価格)という意味です。

超有名なリストライク

上の例とは逆に、超高額になるリストライクもあります。例えば、現存数が極めて少ない人気コインの場合です。

代表例は、アメリカ合衆国の1804年銘のシルバーダラーです。デザインがわずかに異なるリストライクが、何種類かあります。これが、2009年のオークションで230万ドルで落札されました。当時の為替レートで2億円くらいです。リーマンショック後の混乱期に、この価格。

現存数が圧倒的に少ないこと、デザインが良いこと、状態の良さなどが評価されたのでしょう。

シルバーダラー

シルバーダラー

画像引用:USA COIN BOOK

希少価値があるリストライク

1804年銘のシルバーダラーは、極端な高値です。一般の人でも手に届く範囲で、希少価値が高いリストライクを紹介します。英領インドで発行された15ルピー金貨です。

英領インド15ルピー金貨

英領インド15ルピー金貨

コインのスペック

リストライクですから、その前に発行された元の金貨があります。それは通常貨で、KMカタログによると発行枚数は211万枚です。通常貨ですから、数多く発行されても納得です。その後、プルーフでリストライクが作られました。製造枚数を見ると…12枚。なるほど。あまりに枚数が少ない&保存状態が素晴らしいので、価格もそれにふさわしくなっています。

なお、金貨ですから、本来は金色に光っているはずです。ところが、この金貨は黒いです。理由はスキャナーにあります。コインを撮影する際、スキャナーは鮮明な画像を撮るために、コインに光を当てます。すると、コインが光を完璧に弾いてしまい、結果として黒く写ります。

コインに小さな傷や凹凸が増えてくると、この黒さはなくなります。すなわち、この黒い金貨は傷が少なくて高品質だと分かります。

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