趣味でコインを触っていると、つまみ食いの知識が蓄積されるばかりで体系的になっていない感じです。それでも構わないですが、何とかならないかな…と考えていたところ、特定のコインについて調査してみようという話が出ました。
今回のターゲットは、マルタ騎士団が発行した(とされている)「昭和天皇生誕100周年記念金貨」です。
コインの外観
コインのスペック
- 額面:2,500 Liras
- 年号:2001年
- 材料:金
今回のコインは画像が見つからず、外観画像はありません。この時点で怪しい雰囲気が。
調査の成り行きと結果
コインを調査する方法は、大きく分けて2種類です。インターネットと書籍。
インターネット調査
インターネットでの調査方法は、NGCなどのコイン鑑定会社サイト、Numistaなどのコイン情報サイト、あるいは過去のオークション履歴などが該当します。
調査の結果、NGCに少しだけ情報がありましたが、大した情報を得られませんでした。
画像引用:NGC
このページの最下部に市場価格について記載があり、「MS63 828.91*」とあります。そして上のスクリーンショットの右側には、「Melt Value: $829.00 (4/23/2023)」とあります。
これはすなわち、「このコインは未使用品であっても金属の価値のみであり、コインとしての価値は全くない」という意味になります。
コインの発行枚数はおそらく少なく、そして情報がなかなか見つからず、さらにはモチーフが有名人であっても価格はシビアに決まる。これがコインの世界です。
さらに書くなら、仮にこれを金属の価値で売ろうと思っても、インゴットでないので取り扱いが不便です。このため、買取会社に金相場より安く買ってもらうことになります。それはもったいないので、金貨として流通させることになるでしょう。
なお、MS63という数字が掲載されているので、グレーディング済みのコインがあるかもしれません。そこで、NGCサイトで調べようとしましたが、なぜか私のPCでは調べられず。NGCのサイトは機能していない部分がかなりあるような感じです(私のPCの問題かもしれません)。
書籍での調査
インターネットでの調査と並行してチェックするのは、各種書籍です。主なところは『Gold Coins of the World』(フリードバーグ)や『Standard Catalogue of WORLD COINS』あたりなど。結果、何の情報も得られませんでした。
なお、私(ゆったり為替)は英米仏などのコイン書籍は所有していますが、マルタ騎士団のコイン書籍は所有していません。マルタ騎士団のコイン書籍があるのかどうかも不明ですし、所有しているとしたら大変なマニアです。
私はまだその域に達していません(そこまで進んだら自宅が図書館になるので、購入は控え目にしています。)
ツイッターで支援要請
どうしても前に進まないので、世界のコレクターに支援要請することにしました。
1) Hi guys,
I'm now looking for information on a gold coin issued by Knights of Malta.
It was issued in 2002, the nominal value is 2,500 Liras, a commemorative coin for the centennial of the birthday of Japan's emperor Hirohito.— のんびりアンティークコイン (@ntqcns) April 10, 2023
マルタ騎士団発行の金貨の情報を探しています。
2002年に発行され、昭和天皇生誕100周年の記念金貨で額面は2,500リレです。
コインには2001年と刻印されていますが、発行そのものは2002年だったという情報をどこかで見ました(情報元を忘れました)。刻印は2001年なのだから2001年と書くべきでした。
それはさておき、まったく回答をもらえず。フォロワー数が少ないので仕方ないですし、このコインはあまりにレアです。
マルタ騎士団に直接質問!
こうなったら最終手段、発行元のマルタ騎士団に直接質問しました。所在地はローマで日本から遠く離れていますが、簡単に照会できます。便利な世界になりました。
ただ、個人の質問に回答していたら彼らの仕事が滞ってしまうはずで、まともに回答をいただけるとは想定していませんでした。
しかし、質問を送ってから数日で回答をいただけました。ありがたいことです。なお、電子メールといえども私信です。マルタ騎士団はメールそのものの公開を想定していないはずで、ここでは一般コレクターに有用な部分を紹介します。
回答の概要
- 問い合わせのコインとマルタ騎士団には何の関係もない
- マルタ騎士団は自国の歴史を記念する場合にコインを発行する
- コインの通貨単位はScudos、Taris、Granosである
- このコインを発行した人(機関)は、マルタ騎士団の名を使って発行した可能性
通貨単位は違うしマルタ騎士団はこのコインを知らないし、マルタ騎士団にとって不愉快な質問だったろうと思います。この質問を送ってしまってすみません…という感じです。確実に言えるのは「マルタ騎士団は個人の質問にも丁寧に回答してくれて、とても素晴らしい」ということです。
制作者不明
結局、制作者は不明という状態になりました。誰が作ったかについて、候補は以下の通りです。
一つ目は、マルタ騎士団と無関係な誰かが何らかの理由で作ったという想定です。これが正解の場合、調査をさらに進めるのは難しそうです。2つ目は、マルタつながりで、マルタ共和国が作ったという想定。これは強引なので、違うだろうと思います。
最後は、世界各地に散在するマルタ騎士団関係者の誰かが、本国に情報提供しないまま作ったという想定です。これが最も自然な感じがしますが、マルタ騎士団の法に照らしてこれができるかどうか不明です。
とりあえず、調査はここまで。コインがオークション等に出てきたら、画像をじっくり眺めたいと思います。そして、市場に出てきたら、販売会社やオークション運営会社はこのコインをどのように評価するでしょうか。興味深いです。
ChatGPTに聞いてみた
もしかしたら、ChatGPTなら何か情報を知っているかもしれません。そこで、質問してみました。結果は…
マルタ騎士団が発行した「昭和天皇生誕100周年記念金貨」は、日本の昭和天皇が生まれてから100年を記念して、1991年に発行された記念金貨です。
この金貨は、純金製であり、直径は22ミリメートル、重さは7.78グラムです。表面には、昭和天皇の肖像が刻印されています。裏面には、マルタ騎士団の紋章が刻まれています。
マルタ騎士団は、中世に創設されたカトリック教会の騎士団であり、現在は主に慈善活動を行っています。この記念金貨は、マルタ騎士団が発行する記念貨幣の一つであり、日本の皇室との深いつながりを示すものとして、多くのコレクターや貴金属投資家から注目されています。
「昭和天皇生誕100周年記念金貨」は、限定発行であり、発行枚数はわずか1万枚とされています。そのため、市場価値が高騰することが予想されており、コレクションや投資の対象として注目されています。
全然ダメでした。ChatGPTの回答は、コインの大きさも重さも発行年も間違いだらけ(下はChatGPTの回答のスクリーンショットです)。