エリザベス2世の崩御を境にして、モダンコインへの関心が再燃しているようです。一時期、モダンコインは価格下落が顕著でしたが、貴金属価格の上昇も手伝って人気が復活しています。
では、2022年に即位したチャールズ3世の金貨もさぞかし人気だろう…と思いきや、実態はまったく逆の模様です。
チャールズ3世の戴冠記念5ポンド金貨
画像引用:Royal Mint
コインのスペック
- 額面:5ポンド
- 年号:2023年
- 材料:金
戴冠記念金貨は5枚セットで発行され、内訳は5ポンド、2ポンド、ソブリン、1/2ソブリンそして1/4ソブリンです。
上の画像の表側は、チャールズ3世の肖像です。周囲の文字は「CHARLES III DEI GRA REX FID DEF」と書いてあり、「チャールズ3世、神の御加護により王となる 新興の守護者」という趣旨です。エリザベス2世の肖像は右向きでしたので、慣例どおりチャールズ3世は左向きになっています。
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裏側は、お馴染みのセント・ジョージの竜退治です。
不人気で売れない
イギリスで新国王が即位すると、記念金貨が一般向けに発行されることがあります。チャールズ3世の記念金貨の売れ行きは…イギリスのコイン商の話によると「全然売れない」だそうです。
筆者はイギリスに住んでおらず、チャールズ3世の人気等を肌感覚で知らないものの、「まあ仕方ないかな」と直感的に感じてしまいます。
ダイアナ妃が不幸な事故で亡くなったのは1997年。既に30年近く経過しているにもかかわらず人気は根強く、インターネットで「ダイアナ妃」と検索すると、今年になっても数多くの記事が新規掲載されたことがわかります。
ダイアナ妃の人気が高ければ高いほど、チャールズ3世の人気は低迷するのかもしれません。
戴冠記念金貨の発行枚数も抑制
ロイヤルミント(イギリスの造幣局)も不人気を把握していた模様で、戴冠記念金貨セットの発行数は1,050セットに抑えられました。
下は、20世紀以降の戴冠記念金貨(5ポンド)の発行枚数です。エドワード8世は1936年1月に王位を継いだものの同年12月に退位しており、一般向けの記念金貨は発行されていません。エリザベス2世の金貨は特定の機関向けに発行されたのみであり、こちらも一般向けの発行はありませんでした。
国王 | 発行年 | 発行枚数 |
エドワード7世 | 1902 | 8,066 |
ジョージ5世 | 1911 | 2,812 |
エドワード8世 | 1936 | - |
ジョージ6世 | 1937 | 5,500 |
エリザベス2世 | 1953 | - |
チャールズ3世 | 2023 | 1,080 |
過去の国王に比べて、チャールズ3世の発行枚数は格段に少ないです(5枚セットの発行数は1,050、5ポンドは合計で1,080枚)。
現在の金価格は高い一方、昔と比べて量は豊富にありますから、その気になればもっと発行できたはずです。しかし、採算に合わない製造はできませんので、精査した結果、1,050セットに落ち着いたのでしょう。
5ポンド金貨が高値になる可能性
この結果、チャールズ3世が不人気だったから彼の戴冠記念5ポンド金貨の価格が高騰するという、一見すると矛盾するような事態が起こるかもしれません。
イギリスの金貨コレクターの王道の一つに、5ポンド金貨を全種類集めるという道があります。ヴィクトリアのウナとライオンは別格で脇に置くとしても、高グレード品の完集は簡単ではありません。
この結果、発行枚数が少ないほど価格が高いという傾向が顕著に見られます。
国王 | 発行枚数 | 流通価格順位 |
エドワード7世 | 8,066 | 3位 |
ジョージ6世 | 5,500 | 2位 |
ジョージ5世 | 2,812 | 1位 |
チャールズ3世 | 1,080 | ? |
当時の国王の人気度や業績等でなく、発行枚数が流通価格に直接的に反映されているのです。時間が経過したのち、5ポンドコレクターがチャールズ3世の戴冠記念5ポンド金貨を買えないことに気づき、価格が上昇するかもしれません。