コインの世界には、「影打ち(陰打ち)」という言葉があります。影打ちとは、表と裏が同じデザインのエラーコインを指します。正確には、表と裏のデザインが鏡写しのようになっています。
陰打ちのコイン
下のコインを見てみましょう。本来は、下側の画像は、5フランという大きな数字が入ったデザインになるはずでした。しかし、ナポレオンの顔になっています。しかも、左を向いています(本来は右です)。
コインのスペック
- 額面:5フラン
- 材料:銀
比較のために、通常のコインを下に掲載します。下側(裏面)に額面・製造年・ミントマーク等が刻印されています。
上のコインは、この部分がナポレオンの肖像になってしまいました。すなわち、いつ、どの造幣局で作られたのか分かりません。ただし、ナポレオンの像ですから、製造年はぼんやりとなら分かります。
コインのスペック
- 額面:5フラン
- 年号:1809年
- 材料:銀
上側のコインは、いわゆるエラー貨幣です。なぜ、このようなコインができてしまうのでしょうか。
影打ちのエラーコインができる仕組み
エラーコインができる仕組みを、確認しましょう。下の絵は、コイン製造の仕組みを簡潔に描いたものです。刻印前の金属板に、上と下から金型で圧力をかけます。そして取り出すと、コインの出来上がりです。
ところが、何らかの理由で、この仕組みがうまくいかないことがあります。下の絵の通りです。本来は、刻印済みのコインを取り出してから、次のコインを作ります。しかし、取り出しに失敗してコインが残ったまま、次のコインの地金を挟んでいる様子を描いています。
この状態で上下から圧力をかけると、表と裏で同じデザインのコインが出来上がります。正確には、左右対称で凹凸が逆のコインとなります。
一般的には、この種のコインは流通しません。造幣局内の流通前検査で、エラー貨幣として処分されてしまうからです。しかし、検査をすり抜けたコインは、そのまま世の中に出てきます。すなわち、エラーコインはレア度が高いです。