1601年~1800年 イギリス

ウィリアム3世の5ギニー金貨

2023年5月27日

5ギニー金貨は高額でなかなか市場に出てこないので、完集が大変です。今回はその中の一枚、ウィリアム3世の5ギニー金貨を概観します。

コインの外観

ウィリアム3世

ウィリアム3世

画像引用元:(株)日本コインオークション

コインのスペック

  • 額面:5ギニー
  • 年号:1699年
  • 材料:金

日本コインオークションのウェブサイトでウィリアム3世の落札記録を検索すると、5ギニー金貨は2枚しか出てきません。それほどレアなコインということになります。

表面のデザイン

ウィリアム3世

ウィリアム3世の右向き胸像が描かれています。周囲の文字は「GVLIELMVS III DEI GRA」(William Third by the Grace of God)で、「神の御加護を受けているウィリアム3世」という趣旨です。

裏面のデザイン

ウィリアム3世

裏面は当時のイギリスが良くわかるデザインです。4つの紋章の上にそれぞれ王冠が描かれており、ウィリアム3世がこれらの地域を統治している(または統治する権利があると主張している)ことが分かります。

12時の方向の紋章はイングランド、3時の方向はスコットランド、以下順にフランス、アイルランドとなります。

周囲の文字は「MAG BR FRA ET HIB REX」(King of Great Britain, France and Ireland)で、「イギリス、フランス、アイルランドの王」という趣旨です。

ナッサウ家のライオン

なお、真ん中にライオンが描かれており、これはナッサウ家を示します。ウィリアム3世はオランダのナッサウ家出身です。母親はチャールズ1世の娘(メアリー・スチュアート)だったので、王位継承権がありました。

とはいえ、本来ならばイギリス王の子が次の王になるはずで、それはウィリアム3世ではありません。しかし、ウィリアム3世の前の王はジェームス2世でした。ジェームス2世は1688年の名誉革命で国外に追放されており、議会はウィリアム3世とその妻メアリー2世を国王として迎え入れたという流れです。

これを受けて、ウィリアム3世の5ギニー金貨の真ん中にナッサウ家のライオンが描かれています。ジェームス2世の5ギニー金貨にはありません。

ウェールズはどこに行った?

ちなみに、イギリスのコインを見るとウェールズが紋章に描かれておらず、毎回気になります。

イギリスの地図

画像引用:ウィキペディア

イギリスは4つの国の連合王国です。現在のスコットランド(Scotland)は連合王国からの分離独立機運がくすぶり続け、そして北アイルランド(Nothern Ireland)では統治のあり方などをめぐって2つの勢力がぶつかり合っています。

それに比べてウェールズ(Wales)はおとなしく、さらに、イギリスの紋章にも国旗にも描かれていません。

ウェールズはイングランドと一体化したといえばそれまでなのですが、ウェールズ独自の旗がありますし、紋章もあります。また、ラグビーやサッカーでは独自の代表チームを擁しており、イングランドとは明らかに別です。

生まれも育ちもウェールズだという人々は、この事態をどう感じているのだろう?と疑問に思います。インターネット上にアンケート結果が落ちているかもしれませんので、探してみても良さそうです(まだ調べていません)。

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